【あっ。】

【進歩】

 新店舗が増えている。

 白くて可愛いお店が増えた気がする。店内は逆にあえての今どきオシャレな無機質コンクリート打ちっぱなし。

 一見何屋さんか分からないお店に、分からない言葉のメニューが飛び交って、注文の仕方が分からない。

 絵本で昔に読んだ、田舎に一軒家があって、どんどんそれが都会化して飲み込まれてしまう話。その結末は今は思い出せない。

 とても印象的だけど、メタファー的だけど少しずつこの街もそうなっているのかも?と。

 少なくとも雑多なSNSの噂話は、あの絵本でどんどん周りのトラフィックが増えていく様子にそっくりだ。

 その家を潰すわけではない、その家を変えるわけではない、でも取り巻く景色は変わり、言葉は変わり、価値観がかわる。

 そこに勝手に舞い上がる埃にまみれて色褪せてゆく。それを遠くから来た人がノスタルジーなんて言う。

 これは人の進歩だ。

 別に褒めてはいない。

 別に怒ってない。

 ただ、ゆっくりとズルズルと土俵際に近づいていく実感に意外な喜びを感じる。時代に押し出されるのを待つのか、ただ自ら石となり動かずにもう少し凌ぐのか。

 それをよく考えて進んで歩いてみる。

 それで良いなら、やはりこれは。

 進歩だ。

【老舗】

 気がついたら多くの老舗のご主人たちが、昨今この街から引退された。その数が数えきれなくなって困っている。

 八百屋さん、肉屋さん、トンカツ屋さん、蕎麦屋さん、中華屋さん、うどん屋さん、お好み焼き屋さん、居酒屋さん、スナックさん、バーもまた。

 順不同、その数不明。

13年、同じ街にいるからこれは自然の流れと受け入れるしかない。それはそう。13年前にお店を出した時、近くの小学校の6年生が今は25歳。

 常連さんで居てくれてもおかしくない。

 健康第一を掲げてやってきたけど、この13年で口にした病名の数をあげるだけで日が暮れる。不慮の事故や怪我も数多ある。

 創業20年経ってもうちはまだまだ、先輩方はたくさんいますから。なんて言葉がたくましく、その街の活気を感じさせる。

 13年なんてまだ、まだまだ。まだまだ、まだまだだ。まだまだ、これからも続いていかないと。まだまだ、引退は考えられない。まだまだこの街と共に、まだまだ、まだまだ老舗と呼ばれるには程遠い。

まだまだ、まだまだだ。

【シュールな夢】

 23年後、来年の2026年に年男として48歳を迎える。そこから12年経ったら60歳でまた年男を迎える。更に12年経ったら、72歳になる。その一年前に、このまま行くとお店が築年数100年を迎えるとか、迎えないとか。

 至る所が古くなっているけど、丁寧に、丁寧にやって、なんとか築年数100年BARで働きたい。と一応今は言っておいて、23年後に振り返ったら何を感じるだろう。

 色々考えても仕方ないのでシュールな夢を描いて、深く考えずに一日一日を営んでいく。

 色々な変化を感じながら、色々な変化を感じられなくなりながら。

 たぶん48回目の年末年始を迎える。年内のブログは後一回本当の年末に書こうと思っている。

 街に新しいお店が生まれて、時を迎えたお店がその営みを終える。それは地球規模でみたら、小さな細胞の新陳代謝みたいなものなのに、身近に起きると、「あっ。」となって歩みを止めてしまう。

 偶然のご縁で持てたお店。このお店でよかったなと。この街で良かったなと。しんみりと思う。

 

 

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【師走の朝】