【師走の朝】

【師走の朝】

師走の朝と、新年の朝は似ている。

乾いた空気が澄んでいるせいか、朝日の照らす、あれも、これも鮮明に輝いている。

黄色く染まった銀杏の葉。青空には雲ひとつない。水たまりには、昨日降った雨が残る。キラキラと一年を通じて全てが一番綺麗に反射する。

見た目には美しくポカポカと暖かそうで、包み込んでくれそうな煌めきの中、その澄んだ空気は凛として冷たい。ピッと引き締まる、この感じだ。

師走といって、なんでも走るように、忙(せわ)しなくすぎて行く。あっという間に訪れる、年の瀬がもうそこまで来ている。

この冷たく澄んだ空気を鼻から肺までなん度も丁寧に吸い込んでく。

師走の朝。

一年を通じて起きた事を一番綺麗に反映し、それを持って新年を迎える。

だから似ているのかも知れない。

【線路】

踏切を渡りたくなる。

カンカンカンとなり始めたら運がいい。特等席で電車が行くのを見送る。

いつもはこの道を通らないで、線路も見えない住宅街を黙々と歩くのだけど、今日は一本奥の道を歩く。

踏切だって陸橋の下を潜ってしまえば、電車が通り過ぎるのを見守る必要もないのだけれど、わざわざ踏切を目指すのは、気持ちに余裕があるからなのかも知れない。

やはり、こんな近くで走り去る電車は驚くほど大きな音を立てて、目の前の視線を遮っていく。赤灯が忙しなく点滅を繰り返す。

不意を突いて走ってきたら驚いて、またつらくなってしまいそうだ。やっぱり今日は気持ちに余裕があるのだろう。

カンカンカンと鳴り響いていた警報器がピタリと止まり、横たわっていた遮断機が高々と上がり、青天を指差す。その先には凸凹とした道が開いている。

【イルミネーション】

「寒いですね。」

という代わりに、

「綺麗なイルミネーションですね。」

と、挨拶を交わす。

「こんにちは。」

と、声をかける。

「こんばんわ。」

と、返ってくる。

「寒いですね。」

と、やっぱりいってしまう。

「本当に、まいっちゃうよ。」

と返ってくる。

こうやって毎年、年末が近づき、心の奥でだけ、小さく新年の心構えをしてきたのに、それでも季節が変わるたびに、そして季節が変わらない事に、困っちゃって、まいっちゃって、日々のしんどさを気温のせいにしてやり過ごす。

いつものやり取りや、いつも歩いてきた道や、あれや、これや。イルミネーションがキラキラしているだけなのに、気持ちと路地を明るく照らす。

今年最後の満月も優しく路地を照らしている。

そんな大きな満月の下で、キラキラと煌めくイルミネーションが、色を変え、リズムを変えて、また点滅を始める。

そんなイルミネーションの似つかわしくない男二人が今日もまた、いつもの場所で立ち話。

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【あっ。】

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【焚き火の前で】