【朝の砂】
【朝の砂】
〜沖縄から戻りました〜
【備忘録】
2026年3/3火曜日から、3/7土曜日まで沖縄へ行く。3/3の夕方に那覇空港に到着。空港で荷物ピックアップ待ちの間に、ポー玉ご飯サンドを晩御飯の代わりに購入する。レンタカーを借りて、瀬底島を目指す。21時のチェックインを目指して車を走らせる。無事にチェックインを済ませたら、瀬底大橋を再び越えて、オリオンビールと滞在中のお酒。明日の朝ごはんの食材を買う。
最終日3/7。部屋にもう食材を残さないために、朝ごはんは外に行く。今朝の風は強い。7時からやってるハワイアン系のモーニングのお店までは車で10分ちょっとだ。部屋に戻り、この旅への感謝を込めながら丁寧に荷物のパッキングをする。10時にチェックアウト。沖縄で今回会えた人たちに、本日のフライトを伝える。
車を南に走らせる。それぞれの個性と伝統のやちむん窯元をめぐるのもこの旅の目的の一つ。瀬底島にもやちむん陶房はあり、訪問させていただいた。次回はバーベキューのお誘いも頂いた。沖縄の自然と昔からの家々に囲まれた窯元には、初夏の風が土の香りを運ぶ。沖縄では焼き物をやちむんという。その美しい陶器に淹れたコーヒーの香りと、風が混じる。
次に読谷村のやちむん窯元を目指して車を走らせる。懐かしい景色と、職人さんの日々の技が染みる仕事場。新しい家族のワンちゃんにも会う。こちらでもコーヒーを頂きながら、沖縄の街と生活を感じる。こういう所で暮らしたかったと思える穏やかな時。
それも束の間、また車を走らせる。もう一件、工房さんを周り、この旅の最後のイベントのガンガラーの谷へ向かう。何万年も昔からの鍾乳洞のトンネルは、地底の大河だった。何千年か前にその天井が崩れ落ちて、露出し谷と呼ばれる地形となった。
語れない地球の命と時の営みが沖縄という土地には多く残る。地球の内側に入っていくという感覚は尊い。何千年前に露出した谷には根が伸びている。驚く程に長く伸びたガジュマルの願いが。
空港に再び向かう。2度目の給油をする。レンタカーを返し、空港へ運んでもらう。荷物をあずけ、蕎麦屋に入り大ジョッキを頼む。幻想からまた日常に戻り始める。大ジョッキがもうカラだと気づく。
【日常から離れた】
よく、日常の中の非日常という言葉をバーでは使う。毎日の生活の終わりにサラリと一杯グラスを傾け、洗い流す。そんな毎日。
旅行は、日常から離れた非日常。ベッドが違い、天井が違い、朝日の差し込む窓が違う。朝ちゃんと起きて、コーヒーを飲んで目を覚ます。その日の予定を確認して、荷物をまとめる。車に乗る。南国の森のトンネルをくぐる。窓から海がみえる。
思ったほど冷たくない海水は、不意に飲み込むと思ったより生々しく塩辛い。久しぶりの感覚に呼吸が乱れる。写る世界の全てがポートレートになる。それでも目の前の景色は、決してファインダーには捉えられない。
パラセーリングで空を飛ぶ。生身で空を飛ぶのはこれが初めて。高所恐怖症を隠して。一組目が飛ぶ際の強風とその恐怖で、呼吸困難になる。咳き込む私を若いインストラクターさんが、「お父さん大丈夫ですか?」とすかさず声掛けする。海の上の真水のお茶は心を落ち着けてくれた。
船の上より揺れない。静かな空。どんなに高く登っても、海が広いから高さをあまり感じない。穏やかなのに、心は踊る。心拍数が高まる。飛んでる。飛んでる。飛んでる。360度、全て海。上は空。下も海。水飛沫、船、島、風。
また次の目的地に車を走らせている。心が体験を消化できていない。それでも続く美しい景色。空。太陽。海と風と緑と空の島。台風に簡単にやられないための独特な建築。赤い煉瓦、白い壁。簡単に折れない南の島の植物たち。赤、黄色、オレンジ、ピンク、赤ピンクの花。どこを走っても咲いている。3月なのに。
【朝の砂】
空が青く澄んだ日は、海はエメラルドに輝く。朝でも日によって、浅瀬の広さが違う。お米が炊けるまで50分だとモニターにでる。5分も歩けば浜に着く。
ヨガマットを抱えた人が浜の前で待ち合わせをしている。参加者と間違えられて挨拶される。参加者ではないけど挨拶をかえす朝。波と風で削られた岩が、シュールなくびれを作っている。朝の砂は冷たい。日が登る前の砂浜は素足にひんやりとからむ。
朝に浜に出たことがほとんどなかったから、朝の砂がこんなに冷たいことを知る。海水温は1日を通して大きくは変わらないけれど、砂は日射量で刻々と温度を変える。考えれば当たり前のことを体感して知る。真昼間のフライパンのような暑さの砂は夏に何度も体験してきたのに。
朝の砂浜は静かだった。早朝ヨガのレッスンの声くらいしか聞こえてこない。あとは波音に消される。人の少ない砂浜の端まで行くと、波打ち際の岩がえぐれていて、さらに奥まで路がある。潮が満ちたら戻れない。もうすぐご飯が炊ける。浜の先に進むのは次に残しておく。
波打ち際の濡れた砂の上をあるいて戻る。長い足跡が波に消される。やがてホテルがみえてくる。部屋の炊飯器からは湯気がのぼる。朝の砂は冷たい。若者たちがお揃いで買ったのであろう、数枚のオリオンビールのTシャツは、ベランダの風に揺られながら、まだ朝になるのを待っている。