【江ノ島に行ってきます】

【江ノ島に泊まる】

 たまに、江ノ島に泊まりに行く。

 泊まりで江ノ島に行くというと、よく驚かれる。東京から一時間ちょっとで行けるので、確かになぜわざわざ泊まるのかという疑問は理解できる。

 それでも私は江ノ島に泊まりに行く。最近は江ノ島エリアの駅の近くの手軽な民泊やホテルに泊まることが多いが、江ノ島の島内にある老舗の旅館にも泊まったこととある。

 泊まる一番の利点は、帰らなくていいこと。

 当然だけれどもこれが一番の利点。そして、日帰りだったら、遅めのお昼を並んで食べて、ビールを軽く一杯ひっかけて夕方には帰りの電車に乗るところだが、泊まりの場合は、そこからもう一歩、江ノ島の魅力に迫ることができるのだ。


【江ノ島の夜】

 サラリと登るには江ノ島の山は、なかなかしっかり高い。途中にいくつかの神社があり、今はオシャレな海の見えるカフェやレストランもあり。そして昔ながらの定食屋さんやお土産やさんがある。


 歩いて登るルートを見ると、なかなか、自然の深い山だとわかる。目の前を舞う鳶の数がその海の豊かさの指標になる。

 鎌倉ビールを飲むとすぐに夕方が訪れる。

 エスカーという、有料の動く階段が三つほど続く。僕はそれに乗り込む。トータル千円くらい払うけど、奥の下りの階段はさらにエグいから、そのための体力を考えると、上りはエスカーはあり。

 裏での夕陽の海辺の波をみながら、長い階段を下る。

 奥には鍾乳洞もある。地層は膨大な時間のログだ。こういうのは簡単に千年を超えてくるのに、その刻まれたログが目の前に広がる。そうやっていると、この日の時間は終わりに近づき、陽はオレンジ色を濃くしてゆく。

 参道は暗くても賑わって、それを楽しめるのは近隣組で。島に泊まればなんなら、その後に誰もいない参道をみることができる。僕はそれが好きで。

 老舗の旅館の窓から、参道がみえる。
旅館の看板の後ろ側が、窓からの景色になる。その先に参道がある。

 最後の地元の人が、酒を酌み交わす。その中に僕らもいる。江ノ島の山の上はもう人はいない。島の入口のあたりはもうしばらく賑わっている。行列だった、商店街の定食屋の客もまばらになり、すんなりと席に案内される。サザエのお刺身と焼き魚。そしてビール・アゲイン。


 134と島を繋ぐ橋に集まって若者たちがスケボーをする音が聞こえる。その先の駅の近くには老舗のバーもある。ここがとにかく素晴らしい。お泊まりだからのんびりグラスを傾ける。

 江ノ島の夜が、街の灯りを点らせる。海の上に浮かぶ黒い影を残して。



【江ノ島の朝】

 江ノ島の朝が、海の煌めきと共に始まる。黒い影に朝日が注ぐ。光が島の輪郭と重なる。波がそれに反射する。

 早起きできたら、朝イチで江ノ島を軽く散策する。島に向かう誰もいない橋に波がぶつかり、足元で波の音が響いている。観光客のいない江ノ島は、島民が暮らす小さな島だ。まだ商店街のシャッターも閉まっていて、島はまだ眠っている。

 ゆっくり朝日が昇る。朝の潮の香りを嗅いだらお腹が減ってくる。朝ごはんは何にしようと考える。朝から海鮮丼とビールか。函館の朝市を思い出す。

 部屋に帰って一休み。これがまた、泊まりの醍醐味だ。朝飯、朝ビールからの二度寝。時間はたっぷりある。

 チェックアウトしたら、また島に向かう。まだ人はまばらだ。まだ江ノ島や、江ノ電や、鎌倉にこんなにワラワラと人が集まって来なかった頃を思い出す。

 ゆっくりお参りをして、御朱印ももらったりして、それでもまだお昼前。江ノ島のてっぺんのお庭を散策して、混み出す前の定食屋に入る。またビールを頼む。何度目のビールだろうか。

 人の少ない江ノ島はなんとも長閑で気持ちがいい。山の上で、海が見えて、鳶が飛んで、枝に止まって、ビールを飲む。

 毎日こんな感じでこの島の人たちは暮らしているのかなと、想像する。もう代々引き継がれた生活。晴れの日もあれば、嵐の日もあるだろう。

 そうやって束の間の島民気分に浸っていると、昔懐かしのラーメンが運ばれてくる。

 そうそう、海鮮に飽きた時のラーメンやカツ丼がありがたい。人が集まり出した島に早めの別れを告げて、再訪を誓う。そのまま江ノ島水族館に行ってもいい。街を散策してもいい。

 タイミングが許すなら、昼間の江ノ島の長い橋を渡る時、波が高くなければボートが出ている。通勤ラッシュ程の人たちを横目に、ボートに乗るとそのまま島の裏手に運んでくれる。または帰りに乗るのもいい。

 頭の中に江ノ島が湧いてきた。念のために、江ノ島行きの時刻表を開く。

Next
Next

【春眠暁を覚えず】